日本とジャマイカのレゲエはズレてしまっている|Zendamanインタビュー#2
「Project2」のテーマである“Healthy Junk”の精神をもとに、ゲストに潜む相対する中身、二面性にフィーチャーしていく特別インタビュー。
心からレゲエカルチャーをリスペクトし、聖地ジャマイカで音楽キャリアをスタートさせた若干23歳のレゲエDJ、Zendaman。彼のジャマイカでの暮らしぶり、そして肌で感じたジャマイカと日本のレゲエ観の違いを語ってもらった。
インタビュアーはHIPHOPとファッションについての情報をいち早く発信しているYouTuberのレイ。
「ヤーマン」が招いたピンチ
レイ:ジャマイカに滞在していたときに食らったエピソードある? 衝撃体験みたいな。
ZendaMan:まずは空港についた瞬間に何十人ものジャマイカ人が一気に話しかけてきて。「ジャパニーズ! お前タクシー乗って行くんだろ? 俺のところ乗れ!」みたいな。
レイ:うわうわ!
ZendaMan:腕とかもメッチャ掴まれて、「俺のところに乗れ」みたいな感じで。飛行機降りた瞬間にそれだった。日本人は初対面でも礼儀があると思うんだけど、ジャマイカ人はラフすぎて(笑)。初対面でも全員もう友達みたいなノリで、「おい! 来い!」みたいな感じでくるから。それにまず食らった。
レイ:ジャマイカとは別なんだけど、俺もアフリカに住んでいたときがあって。やっぱり肌が他の人とくらべて明るいから、カモに見られていたのよ。
ZendaMan:うんうん。
レイ:そんな感じはしなかった?
ZendaMan:完全にそうだった。
レイ:「金だ」と思われて、ワッと来るわけじゃん。それにどういう対応をした?
ZendaMan:最初は言葉もわからないから、とりあえず「ヤーマン」って言ってた。とりあえず、なにを言われてもヤーマンって返してたんだよね。
レイ:ヤーマンってどういう意味なの?
ZendaMan:「はい」だね。「イエスマン」からきているから。
レイ:「Ya Man」なんだ。
ZendaMan:そうそう。それのジャマイカバージョンがヤーマン。相槌で言うぐらいの言葉なの。だからヤーマン自体にあまり意味はない。
レイ:それだったら、向こうが要求したことに対して「ヤーマン」って言ってたらヤバくない?
ZendaMan:よくない(笑)。ずっとヤーマンって言っていたら1回2万円請求されたことがある。
レイ:でしょうね(笑)。
ZendaMan:「あれ?」みたいな。その瞬間「ノーマン」というのを覚えるよね。
レイ:そうだよね(笑)。
ZendaMan:やっとそこで断る。
レイ:イエスマンだと向こうはずっとグイグイくるから。
ZendaMan:最初は本当にヤーマンとウイッスしか言えなかった。
自分の道を作れば宝物が手に入る
レイ:若くしてジャマイカに移り住んだことは大きかったですか?
ZendaMan:高校生のときから、自分にしか歩めない道があると感じてたんですよ。それを伝える音楽をいまでもずっとやってきてるんだけど、たとえば日本にいたらレールが引かれちゃうというか。先生とか大人とかが言ってきたことを、自分で考える前に「そうするのが正しいんだ」と信じてしまう。だけど実際には、それぞれにしか歩めない道というのがあって。舗装されてない草原みたいなものが広がってるんだよ。
レイ:まっさらな状態だね。
ZendaMan:それは洞窟かもしれないし、岩場かもしれない。目の前に何もない状態から、自分で歩む道を作った人にしか感じられないオリジナルな感性とか人生とかがあると思っていて。俺の場合、それがジャマイカに行くということだったんですよね。全員が必ずしも日本を出て世界に行ったほうがいいとは思わないんだけど、でももしそういう可能性を自分で感じたなら絶対にやったほうがいい。
レイ:メチャメチャいいこと言った!
ZendaMan:他人が歩んでいない道を行くというのはすごく大変だし、苦労はいっぱいあるんだけど、その分レールに従って生きていたら得られないようなものと出会えるわけ。お金じゃない、死んだら天国にまで持って帰れるような宝物だよ。だから、自分にしかできない可能性を見つけたら、そこに向かって絶対に進んだほうがいい。そうしたら、自分にしか見つけられないものが絶対手に入る。
レイ:最高です。
そんな女の子をビガップしたい
レイ:日本とジャマイカのレゲエシーンに違いはありますか?
ZendaMan:まず一つは、日本のレゲエは20年前くらいに流行ったスタイルが定番として浸透していること。俺とかレイくんよりも20歳くらい年上の世代の音楽性とバイブスで成立している感じがしていて。ジャマイカでは、「ンチャ、ンチャ」みたいなルーツレゲエや2000年代的なレゲエとはまったく別で、ジャマイカンヒップホップとダンスホールレゲエがすごく近づいてるから。
レイ:そこでズレが生じているんだ。ヒップホップもすごく短い周期で流行が変わるじゃん。でも日本は悪い意味でもいい意味でも孤立しているから、スタイルがずっと残って、それをまた繰り返しているという感じなんだろうね。
ZendaMan:そう。昔日本で流行ったジャマイカのレゲエは、ボブ・マーリーみたいなポジティブなメッセージの曲が多かったんだよね。愛の曲だったり。もちろん人の欲とかリアルとかを表現してるダンスホールレゲエもあったんだけど、ポジティブなものが多かったから日本人にすごくフィットしたんだと思う。でも、今のジャマイカにはヒップホップ的というか、悪いことを歌っているレゲエが多くて。
レイ:ワル自慢みたいな。
ZendaMan:完全にそういう感じになってきている。でもやっぱり俺はピースやラブを感じたり、そういうメッセージが伝わるからこそのレゲエだと思うし。ジャマイカに4年住んでいるけど、自分はこのスタイルだなと思ってやっている。
レイ:ピースのスタイルで。
ZendaMan:そこはやっぱり変わらない。もう一つはレゲエの違いというか、日本とジャマイカの違いになるんだけど。日本人って……、いきなりくだらない話になるんだけど、「女の子の体の部分でどこが好きですか?」と言われたら、「おっぱい」と言う人が多いと思うのよ。おっぱいかお尻だったらおっぱい派の人がダントツに多い。けどジャマイカ人はおっぱいなんか興味がなくて、お尻がデカかったらデカいだけいいっていう。
レイ:そうなんだ(笑)。
ZendaMan:俺はサグとかネガティブなワル自慢じゃなくて、もっとピースなメッセージを歌っていきたいというのと同時に、おっぱい好きよりお尻好きの人をもっと増やしたいという思いがある。
レイ:なるほど(笑)。歌詞とかも変わるものね。面白いな。
ZendaMan:おっぱいが小さいだけでペチャパイとか言われちゃう子がいるけど、ペチャパイでもお尻が大きかったらすごくスタイルが良かったりするじゃん。
レイ:確かに。
ZendaMan:俺はそういう女の子たちをビガップしたい。
次回はYouTubeチャンネル「Zenda Mi Zenda」に登場するキャラが濃すぎる人物や、神の導きによって生まれたコラボレーションについて聞く。
▼ZendaManのインタビュー動画はこちら!