MIGHTY CROWNの活動休止についてチョコプラ松尾が深く切り込む|MASTA SIMON インタビュー#4
「Project2」のテーマである“Healthy Junk”の精神をもとに、ゲストに潜む相対する中身、二面性にフィーチャーしていく特別インタビュー。
今回は、日本を代表する唯一無二のダンスホールレゲエ・サウンドであり、国境を越えて世界中のファンからリスペクトを集めるMIGHTY CROWNからMASTA SIMONをゲストに迎える。インタビュアーを務めるのは芸能界屈指のレゲエファンとしても知られるお笑いコンビ・チョコレートプラネットの松尾駿。
12年ぶりに復活する『横浜レゲエ祭』、そして前代未聞の巨大クルーズ船でのパーティーイベントについて熱く語ってくれたパート3に続き、今回は結成30周年イベントで突然発表された活動休止の真相について深掘りしていく。そして、これからのレゲエシーンに思うことについても語ってもらった。
チョコプラ松尾が突然の活動休止の真意に肉迫
松尾:何百回も聞かれていると思うんですけど、なんで活動休止するんですか?
SIMON:同じことをずっとやり続けるというのもすごく素晴らしいことだと思うんだけど、なんか変化が欲しいというのがあって。サウンドとして90年代からスタートした自分たちが目指していたことは、やっぱり世界のサウンドシーン、レゲエシーン、ダンスホールシーンのなかのトップリーグでありたいというのと、サウンドクラッシュでチャンピオンになりたいというのだったんだけど、獲りたい世界タイトル2回ずつ獲ったし、世界チャンピオンにも8回なっているし、「この先サウンドとしてなにがあるんだろう?」という。まあ、普通にMIGHTY CROWNを続けていれば、キャッシュフローとかも安定して、一応それなりに生活できる余裕があって、いろいろなことで困らないだろうけど、それだけじゃないなって。人生は1回しかないし、「切り替えたらどうなるんだろう?」というのもあるし。本当にどうなるかわからないけど、1回ちょっと活動休止してみようって。
松尾:……。
SIMON:生きていて常にワクワクしていたいというのがあるんだよね。マンネリとは言わないけど、呼ばれたからニューヨークに行って、UK回って、カリブ回って、ヨーロッパ回って、日本回ってというのも全然楽しいんだけど、次の刺激が欲しいというのもあるのかもしれない。ドキドキしたいというか「これやったら面白くない?」みたいな、そういう感じかな。
松尾:活動休止は誰が言いだしたんですか?
SIMON:俺がSAMI-Tと「話したいことがある」みたいになって、そのなかで。俺は俺が言ったと思っているけど、SAMI-TはSAMI-Tが言ったと思っているんだよね(笑)。
松尾:え!? じゃあ、お互いなんとなくそう思っていたんですね。
SIMON:そうだね。コロナとか関係なく、実はその前からちょっと思っていたことなんだよね。まだ余力があるし、世界のどこに行っても余裕で沸かせられる自信があるけど、そういうときにパッと辞めるのも面白いかなって思っていて。いろいろな考え方があって、たとえば世界チャンピオンになったボクサーがどんどんよぼよぼになって、ランク外になってもずっと続けているのもカッコいいと思うけど、俺はそういう感じではないかなって。全然イケるときにスパッて止めちゃうのもアリだなと。
松尾:だからこそみんなビックリしたと思うんです。「は? 意味がわからない」って思いましたもん。
SIMON:意味不明というのもいまだに言われていて、海外に行っても「考え直せ」って言われるし。
松尾:考え直してもらって大丈夫なんで。
SIMON:(笑)。でも、次に行くのに辞める勇気も大事かなって。
MASTA SIMONが見据えるレゲエシーンのこれから
松尾:世界のレゲエシーンについて思っていることをお聞きしたいなと。ちょっといろいろな発言をされて……。
SIMON:そうだね。ちょっと前に海外ですごく炎上して。
松尾:僕が言うのもあれなんですけど、ジャマイカの新聞の記事が燃えて……。SAMI-Tさんが言ったんですか?
SIMON:SAMI-Tってことになっているんだけど、本当のことを言うとSAMI-Tとか俺とかChin(MIGHTY CROWNのプロモーター)が言ったことが混ざっていて。まあ、なんとなく考えは一緒だったりするというか、一応「MIGHTY CROWNが言った」という風になっているんだよね。
松尾:総意となっていると。
SIMON:日本で、どちらかと言うとダンスホールなんだけど、いわゆるレゲエの興味が昔とくらべて薄れてきているということを言ったら、その記事をスーパーレジェンドのBounty Killerが自分のインスタに上げて。そうしたら世界中の人が見るわけだから、いろいろなコメントがブワーッて。そうしたらまた今度は違う奴らがそれをピックして「MIGHTY CROWNが言ったことをKillerが援護している」みたいな感じでどんどん話が転がって行って。
松尾:ほう。
SIMON:俺らは「日本で」の話をしたんだけど、いろいろな人たちがそれは「世界中で」話されていることだっていう。この3年とか5年でダンスホールのシーンがすごく変わったんだよね。ジャマイカもガラッと変わったかもしれない。
松尾:それはなにがどう?
SIMON:プレイヤーが変わったというのかな。いま活躍しているアーティストが全然変わっちゃって。
松尾:そうなんですね。
SIMON:いまはトラップダンスホールというのがすごく流行っていて。いわゆるヒップホップのトラップのビートとかでパトワ語でラップするというか、歌うみたいな感じのトラップダンスホールというジャンルができたぐらいなんだよね。
松尾:ヒップホップ寄りの?
SIMON:すごくヒップホップ寄り。それもけっこう論議を呼んで。みんなヒップホップが好きなんだけど、「ジャマイカのアイデンティティがあるのに、わざわざアメリカのカルチャーを入れなくてもいいんじゃないか」というね。でも「これが新しいスタイルだから」と言ったらそれはそうだし。人それぞれの考えなんだけど、これがいろいろなところで話されていて。海外の新聞の見出しになっちゃうぐらいだから。なかにはネットの発言を拾って「MIGHTY CROWNはこんなことも言っているよ」って。そうなるとジャマイカ人が同じこと言っていても、日本の奴が言うのとは違うんだよね。「お前ら同じこと言っているじゃん」って思っても、他の奴が言った事は見出しにならないし。あと、「若い世代をちゃんと教育したほうがいいんじゃないか」みたいなことをジャマイカのアーティストたちはみんな言っているよね。いまの新しいのはあまり感じないというか、フィールしないって。でも、俺はいまの新しいのもすごくカッコいいと思うし、イケてるアーティストが何人かいるんだよね。そこがクロスオーバーしてないというか。
松尾:なるほど。そういうのでちょっと炎上したと。
SIMON:炎上して「この野郎、ジャパニーズが」って言われちゃったりとか(笑)。でも俺らはそういうのに慣れてるし、言いたいことを言うし。別にウソは言ってなくて、自分たちの気持ちを言っているわけであって、本当にダンスホールやレゲエが好きで、これからもっとアゲていきたいというのがあるから。「別に日本なんかいらねえじゃん」みたいな言うやつらもいるしさ。それでちょっとけっこう。俺は個人的には日本でもジャマイカでも、すごいスターがもっと出てきてもいいんじゃないかなという風に思ってる。
「俺の知識を全部教えたいし、渡していきたい」
松尾:いまSIMONさんが日本で「イケてるな」と思うサウンドやアーティストは誰ですか?
SIMON:いま日本でいいなと思うアーティストは、Youth of RootsのKON RYUと、ASOUNDのARIWAとかZENDAMANかな。みんな21、2歳ぐらいで、あの世代がいままでにない感じでものすごい頑張っていて。俺は3年後、5年後にすごく期待している。
松尾:もちろんいたとは思うんですけど、これまでそんな若い人で目立つ存在はあまりいなかった?
SIMON:いなかった。いまは日本も海外も世の中がぶっちゃけ全部ヒップホップだと思うのね。若い子に「なに聴いているの?」と聞いたら、俺が会う奴がそうなのかもしれないけど、ほとんど8割9割が「ヒップホップ聴いている」みたいな。
松尾:多いですね。
SIMON:そういうことが多いから、そのなかでレゲエとかダンスホールを選ぶのがちょっと面白いというか。俺らのときも周りで誰もレゲエなんか聴いてなかったからさ。だから、そういう時代にそういう若い人が出てくるっていうのはなんか面白いじゃん。
松尾:確かに。ZENDAMANをなにかで観たとき滅茶苦茶ワクワクして、レゲエを聴き始めたときの感じを思い出したというか。それで調べたら「メッチャ若い」と思って。
SIMON:そうだね、若いね。あいつも18歳ぐらいからジャマイカに行って。
松尾:高校卒業してすぐに行ったんですよね。
SIMON:うん。本当にみんな実力的にもこれから磨けば、もっとすごいことになると思う。別にレゲエという枠じゃなくても、普通のフェスとかに出ても「なんかいいね」ってなるんじゃないかなという期待がすごくある。だからできることは全部、俺の知識だなんだっていうのを全部教えたいし、渡していきたいというのもあるし。
松尾:それこそプロデュースだったりとか?
SIMON:そうだね。別に名前が出なくても裏でサポートしてあげたりとか。プロデュース以外のことでもやられることがあったら、若い世代をプッシュするべきだなと思ってる。
次回は、当時の安倍首相を「踊らせた」という逸話を持つ首相官邸でのプレイの裏側について話を聞く。
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