いまはいいラッパーがすげえいるからさ|Zeebra インタビュー#3

Project2」のテーマである“Healthy Junk”の精神をもとに、ゲストに潜む相対する中身、二面性にフィーチャーしていく特別インタビュー。今回のゲストは、日本にヒップホップカルチャーを根付かせたと言っても過言ではないカリスマラッパーのZeebra。インタビュアーを務めるのは“Club Queen”の異名を取るラッパーでR&BシンガーのLUNA

 

90年代のヒップホップシーンの雰囲気を語り、若手ラッパーたちへのアドバイスを残してくれたパート2に続き、今回はいま注目の若手ラッパー、自身の活動について語ってくれた。

 

 

 

「彼はすごいと思った」素直に称賛するラッパー

 

LUNA:国内外問わず、いま注目しているラッパーはいたりする?

 

Zeebra:「いま」っていうのがなかなか難しいけどね。もうどのくらい新しいのを出せばいいのか……、というところでもあるけれども、最近俺はLUNAも出てくれた番組やってるじゃん?(編集部註:『Zeebra’s LUNCHTIME BREAKSHIP HOP専門インターネット・ラジオ局「WREP」とABEMAにて平日昼12時より毎日生放送)もちろんシンガーさんも出てくれたりするけど、週に45人、毎日のようにラッパーと話すわけ。いろいろなやつといろいろな話をするなかで、この前「こいつすげえな」と思ったのはSkaai。彼はすごいと思った。

 

LUNA:Skaaiって知らないかも。

 

Zeebra:『ラップスタア誕生』とかに出たりしてた子で、彼は子どものころからいろいろな国を転々としていたらしいのね。親の関係もあったり、「いろいろなところでいろいろなものを学べ」と言われて。アジアだったりいろいろなところに行ったらしいんだけど、日本語と英語と韓国語がしゃべれるんだよ。この前話をしたら「ラップするにあたって日本語ならではのいい部分、韓国語ならではのいい部分、英語ならではのいい部分が全部あります」みたいなこととか言ってて。

 

LUNA:すごい。

 

Zeebra:すごくクレバーで自分で理解して分析してやっている派かな。

 

LUNA:前に喋っているときに、MIYACHIを教えてくれたよね。「マジこいつヤベえ」って、まだMIYACHIYouTubeにちょっと出て、街角とかで歌っているようなとき。そうしたら本当にバーンと出てきたから、やっぱりジブ兄はすげえディグってるなと。

 

Zeebra:いやいや。なんというか、いまはいいラッパーがすげえいるからさ。だから、俺が一番はじめに見つけたわけじゃないし、後追いなところもいっぱいあるんだけどね。まあ、上手いラッパーとか、いいラッパーは聴きゃわかるじゃん。だから聴いたら「おお、いいね!」ってなるし。

 

LUNA:確かに超カッコよかった、ヤバいと思った。

 

 

 

渋谷区観光大使&ナイトアンバサダーとして

 

LUNA:ラッパー以外の活動として、渋谷区観光大使とナイトアンバサダーをやっていたり、海外でもサミットに参加していたりしますよね。活動の意味というか、どうしてこういうことをするようになったのか、きっかけみたいなものは?

 

Zeebra:きっかけは「風営法」の改正なんだよ。「風営法」というとエッチなことを想像する人が多いかもしれませんけど(笑)

 

LUNA:(笑)

 

Zeebra:まあいわゆる、我々が普段からよく行くクラブとか、そういうお酒も出てエンターテインメントがあるようなところは、「風営法」に従って営業されているわけだよね。で、日本のそういうクラブとかっていうのはそれこそGHQの時代、第二次世界大戦直後ぐらいのころに、アメリカの軍人さんたちがいっぱい日本にいて、彼らがあまりにも遊ぶから「12時以降は禁止にしましょう」というルールで、GHQから出て日本の法律になった。それからずっと2016年まで12時以降に営業することは実は非合法だったんだよね。

 

だけど、ディスコが70年代ぐらいから流行って、みんな深夜やっているのが当たり前だと思ってやるじゃない。だけどそれはいろいろな法の目をかいくぐったり、シカトしたりしながらやっていて、だからふとした拍子にお巡りさんが来て「はい、営業停止ね」って、1か月営業停止にさせられちゃうこともあったりして、それが一時期すごく増えたときがあったの。

 

それで、「そんなのおかしくね?」と。別になにも悪いことをしているわけじゃないし、みんな当たり前のようにやっていることなのに、そんな何十年も前の法律がいままでずっとそのまままかり通ってるのはおかしいでしょって。「この法律を変えようよ」と、DJたちもいろいろと立ち上がったタイミングがあって。

 

 

街の人達とどれだけ信頼関係が持てるかを考えて

 

Zeebra:もともとは関西・大阪ではじまったんだよ。それこそアメ村のあたりとかがいっぱいクローズされた時期があって、もともとあっちのほうで盛り上がったんだけど、言ったらクラブもDJの数も東京のほうが多いから、「東京側でも勉強会しましょう」ってなって。

俺なんかよりももっと先輩方がいっぱい集まって、みんなで「どうしたらいいんだ」という勉強会があったときに、クラブのオーナーさんにも何名か来ていただいて話をしたわけ。それで「本当はクラブの事業者会みたいなのがあったら、そこが警察とちゃんと話せたりするんじゃないかな」みたいな提案があったんだけど、オーナーさんたちが言うには「ディスコの時代からそういうことは何度もやろうとしたんだけど、やっぱりみんな商売敵だからうまくいかなくなって空中分解しちゃって」ってことでさ。そしたら「だからね、君たちが会を作ったらいいんだよ」って。「Zeebraくんとか会長になったらわかりやすいから」って言われて「え?」ってなって(笑)

 

LUNA:いきなり(笑)

 

Zeebra:それこそ俺よりも10個も20個も上の先輩方がいっぱいいるところで「Zeebra会長」って言われて「マジすか?」ってなって。それで俺が「クラブとクラブカルチャーを守る会」の会長になったわけ。そこから風営法改正を考えていろいろな活動をしていたんだけど、そんななかで、どうやらヨーロッパには「ナイト・メイヤー」というシステムがあるらしいと。これはなにかというと、「夜の市長」というもので、アムステルダムで始まって、そこからベルリンとか、ヨーロッパのいろいろなエリアにそのシステムがあって、昼の市長さんは夜のことまで目が届かないから、そこはもう夜の市長に任せて、昼の市長と夜の市長がうまく連携をとりながら街を守るみたいなことらしくて。

 

LUNA:へー!

 

Zeebra:「これいいじゃん」となって、それの「第1回ナイト・メイヤーサミット」がアムステルダムで開かれるときに、「これはちょっと参加したいよね」となったわけ。だけど、俺はあくまで「クラブとクラブカルチャーを守る会」の会長で、決して自治体の人じゃないわけだよね。これじゃあちょっと形にならないかなとなったときに、渋谷区が「もしよかったら観光大使やりませんか」と。「だったらナイトアンバサダーでどうですか?」って。

 

LUNA:すごい。

 

Zeebra:「お、マジすか? ぜひやらせてください」って。当時は俺らも風営法を改正するためになにができるのかということで、街の人達とどれだけ信頼関係が持てるかを考えて。だから、クラブが終わったあとにDJたちがみんなで集まって掃除したりとか、そういうのもやったし。道玄坂の商店街の人達のところに行って、そこでレクチャーしたりとか、いろいろなことをやっていたわけよ。そういうのを認めてもらえて「ナイトアンバサダーどうですか?」ってなったのがきっかけ。

 

最終回となる次回のパート4では、肉を食べない食生活を送る「ペスカタリアン」になったきっかけや、これからの日本のヒップホップに期待することを掘り下げる。

 

▼Zeebraのインタビュー動画はこちら!

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